五月人形をお選びになるときは、何店舗かを回ることをおすすめします。お店によって宣伝広告費・経費らの条件が違いますので、それによって同じ品物でも価格にかなりの差がつくことがあります。
商品と価格に自信のあるお店ならば、必ずきちんとお品についての説明をするはずです。また、お店によって仕入先は様々ですので、デザインやお品の品質にもある程度の傾向が見られます。お客様が気に入った五月人形でお子様の初節句のお祝いをして頂くためにも、最初のお店だけでは決めず、何店舗かを実際に見て回って頂くことが大事です。
いくつかのお店をご覧になるうちに、何となく頭に残って離れない、そんなお品に出会えることと思います。そういったインスピレーションを大事にして頂くと、きっと良い五月人形選びができるかと思います。
◆鎧・兜を選ぶ2つのポイント◆
鎧・兜のお値段は、素材や仕様によって決まってきます。特に、それなりのお値段で売られている鎧・兜をご覧になる際は、素材・仕上げを見るために、お店の人に鎧・兜を手にとってもらい、どの様な仕様になっているか、前面はもちろん、後ろや裏もきちんと説明してもらうことがとても重要です。良心的なお店は、そのようなご要望にも必ず答えてくれるはずです。
ここでは鎧・兜のお値段に違いが出る重要な二カ所をご説明いたしますので、お品選びの際の参考にして頂ければ幸いです。
◆重要1 小札(こざね)を見る
鎧・兜は小札(こざね)を威糸(おどし)で編み込んで作られています。
図のように小札・威し(糸)・小札・威しという組み合わせで出来ていますので、この小札の仕様が鎧・兜の値段に影響します。
小札には主に金属製・和紙製・革製の三種類があり、どれも一長一短がありますが、金属・革製の小札が長年飾るには適しているかと思われます。特に金属製は経年による変形の心配がありません。
金属製の小札は、一見すると同じような金色の小札に見えますが、金メッキ仕様のものと、箔を張って作るものでは価格にかなりの差が出ます。特に、金沢箔張のものは輝きも美しく、箔を張ってありますのでサビが出ず長年飾っても重厚さが変わりません。
小札の裏にもアメ色の漆塗や白檀塗を施してあるものは、これもまたサビ(ろくしょう)を防ぐため、手間のかかっている小札です。また、同じ箔押し・漆塗仕上げの小札でも厚さが通常の小札より倍くらい厚いものがあり、それは総裏と称される最高級の仕様です。
◆重要2 鉢の仕様
兜の頭部分の鉢(はち)と呼ばれる部分の仕様は、型に合金やプラスチックを流し込んで作る型抜き鉢と、本物と同じ様に一枚一枚継いで作る矧ぎ合わせ鉢(はぎあわせばち,重ね鉢とも)とがあります。
型抜きの鉢に比べますと、矧ぎ合わせた鉢の方が手間をかけて作りますので、高級品ということになります。
出来上がっているとなかなか見分けの難しい鉢ですが、鎧・兜のお値段に影響する重要な部分ですので、仕様をよく確認することが大切です。
高級仕立ての鎧・兜は、その仕様が作札に記されていますので、作札を確認することも重要です。
ほか、兜の吹返し部分にも様々な仕様があります。
近年人気が高まっている着用鎧・兜については、実際に着用するという点やお子様への安全性を考慮し、軽い素材でできているものがほとんどになります。そのため、大きさに比べると割安なお品が多くなりますが、吹返しの仕様や、鍬形の素材、鉢の装飾の仕様など、作りに差が出る部分もありますので、よく確認して頂くことが肝要です。
◆五月人形が皆様に届くまで◆
鎧・兜は多くの専門工程を経てお客様へ届くものであり、広告等に見られる製造直売・専属甲冑師を有している等のことは実際にはありません。鎧・兜はある程度工業力も必要なため、作っている所も限定されています。
五月人形のブランドとは、テレビ等で聞き馴染みのある大型店の店名がブランドと思われがちですが、鎧・兜においてのブランドとは店名ではなく甲冑師の名前のことです。店の名前で選ぶか、ブランド甲冑師で選ぶかはお好みにはなりますが、直接仕入の甲冑師作品は高品質のものがお求めやすい価格で提供されることが多くなります。
業界が認める一流甲冑師の品質の良さは、その証として鎧・兜の仕様および甲冑師名が作札に記載されていますので、作札を確認することがとても重要になります。同じ甲冑師の手がける鎧・兜が、一方では監修店名等の作札で売られていることもありますので、価格を比較する際には注意が必要です。